裁判と時効の援用について

訴状が届いたら

 借金やクレジットカードの未払金の返済をしないまま長期間が経過すると、簡易裁判所や地方裁判所から訴状が届くことがあります。訴状を受け取ったにもかかわらず、期日までに答弁書(反論や言い分を書いた書類)を提出せず、裁判の期日にも欠席すると、判決が出て預貯金口座や給与などを債権者に差し押さえられてしまう可能性があります。
 訴状は「特別送達」という特殊な郵便で送られてきます。特別送達は書留郵便と同じで、本人や同居人が郵便局員から手渡しで受け取り、その際には署名や押印が必要です。封筒には、債権者が訴えを起こした裁判所の名称が書かれています。

 訴状を受け取ったら、まずは「原告(訴えた人)」の会社名などを確認します。とくに延滞している借入先が複数ある方は、どの業者から訴えられたのかを確認する必要があります。なお、原告は、必ずしも自分がお金を借りたり、クレジットカードを作っていた会社とは限りません。もともとの債権者(銀行など)と保証委託契約を結んでいた会社(保証会社など)や、債権を譲り受けた会社(債権回収代行会社など)の場合もあります。そのため、聞いたことがない会社から訴えられた場合でも、まずは訴状の中身をよく読んで、どの借入先からのものかを確認する必要があります。


 次に、「被告(訴えられた人)」の欄に書かれている自分の住所氏名に誤りがないかを確認します。なお、訴状は通常は住民票上の住所に届きますが、現在の居所が住民票と異なる場合や、自営業者の方でお店の方が郵便物を受け取りやすいような場合には、その旨も裁判所に連絡しておきます。


 次は「訴額」の確認です。ただし、訴額は借金や立替金債務の「元金」が記載されていますので、原告が被告に支払いを求めている金額の総額ではありません。実際には利息や延滞金も含めた金額が請求されています。これについては「請求の趣旨」という欄に書かれています。これについては「請求の趣旨」という欄に書かれています。請求の趣旨には、通常は以下のようなことが書かれていると思います。


1.被告は原告に対し、金〇〇〇〇〇〇円及びこれに対する平成〇〇年〇月〇日から支払い済みに至るまで年率〇〇%の割合による金員を支払え。

2.訴訟費用は被告の負担とする

 との判決並びに仮執行の宣言を求める。


 それから「請求の原因」で、自分がもともとお金を借りたりしていた業者の名前や借り入れの時期、金額や内容を確認します。債権が保証会社や債権回収会社に移っていた場合や、会社名が合併や商号変更で変わっていたような場合は、この欄にその経過が書かれているはずです。


 証拠資料には、自分が最初にお金を借りた際の契約書の写しや、それまでの取引明細書などが添付されていることが多いので、その内容も間違いないかどうかを確認します。


 訴状を確認したら、次は「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」を確認します。左上に事件番号と原告・被告の氏名が書かれていますが、裁判所に問合せをする場合には、まずこの事件番号や原告・被告の氏名を伝えます。そして、重要なのが「期日」と「場所」です。


 裁判では、期日を守ることは絶対です。期日までに答弁書を提出せず、期日にも欠席した場合、被告は原告の言い分をすべて認めたことになり、原告の全面勝訴、被告の全面敗訴となります(いわゆる「欠席裁判」)。また、期日に出席するつもりでいたとしても、急病や交通機関のトラブルによって遅刻や欠席となる可能性もありますので、答弁書は遅くとも期日の1週間くらい前までには裁判所に提出しておくべきです。


 次に、出廷すべき裁判所の場所ですが、「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」には「当裁判所 民事〇号法廷」などと書かれていますので、「当裁判所」がどの裁判所かを確認します。これは訴状が入っていた封筒や、「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」のどこかに書かれているはずです。ここで問題となるのが裁判所の場所(どこの市町村にあるか)と種類(簡易裁判所か地方裁判所か)です。


 まず、裁判所の場所ですが、被告の住所地の近くの裁判所ではなく、原告の本店所在地などのある地域の裁判所であることが多いです。これは、金銭の支払いを請求する訴訟の場合は、裁判所の管轄が原告・被告のどちらの住所地の裁判所でも受付が可能であるためです。また、最初にお金を借りる際に債権者と交わした契約書の中には、たいていの場合、裁判になった場合の管轄のことが書かれており、債権者の本店所在地となっていることが多いからです。貸金業者や信販会社が原告の場合には、その多くが東京都などの大都市に本店を構えているため、それ以外の地方都市(例えば金沢市)に住んでいる場合には、裁判所に行くまでの交通費もばかになりません。


 次に、裁判所の種類ですが、金銭の支払いを求める裁判では、第一審は地方裁判所か簡易裁判所のどちらかです。どちらになるのかは「訴額」によります。「訴額」というのは、大雑把にいうと、原告が被告に支払いを求める金額(請求金額)のうちの元金の額です。この訴額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合には地方裁判所となります。例えば、借金の元金が100万円、利息や延滞金が50万円の場合は、合計金額の150万円ではなく元金の100万円で区分されるので、簡易裁判所の管轄となります。


 そして、これが重要な点ですが、簡易裁判所の場合は、答弁書や準備書面という書類さえ期限を守って提出しておけば、被告は裁判所に行かなくても、欠席扱いにはなりません。しかし、地方裁判所の場合は、第1回目の期日は答弁書を出しておけば欠席扱いにはなりませんが、第2回目以降は被告本人(もしくは代理人弁護士)が、必ず出席しなければなりません。つまり、管轄が簡易裁判所であれば、遠方の裁判所まで行かなくても何とかなりますが、地方裁判所となると、2回目の期日以降は本人か代理人が行かなければなりません。(もっとも、分割払いで和解する場合には「電話会議システム」という制度を利用する場合がありますが、それを利用するかどうかは裁判官の判断によります。)


 また、簡易裁判所の場合は、弁護士以外に、法務大臣の認定を受けた司法書士でも代理人になれますが、地方裁判所の場合には弁護士しか代理人になれません。


 訴状を受け取ったにもかかわらず、期日までに答弁書を提出せず、裁判の期日にも欠席すると、自動的に原告の言い分をすべて認める判決が出ます。その判決書を受け取ってからさらに2週間が経過すると、判決が確定して控訴することもできなくなります。裁判で争った結果として被告が敗訴した場合も同様です。


 それでもなお支払いをしない場合や、分割払いの和解が成立したにもかかわらず支払いが滞ってしまったような場合は、預貯金口座や給与などを債権者に差し押さえられてしまう可能性があります。具体的には、債権者によって自分の預貯金口座にあった残高を強制的に引き落とされてしまったり、給与の4分の1を債権者に持っていかれたりすることになります。


 ここで問題となるのは、例えば、債務者がある銀行から住宅ローンを借りており、その住宅ローンについては毎月きちんと支払っている場合であっても、別の貸金業者からの借金の返済が滞っていたことによって支払督促を受け、その住宅ローンを組んでいる銀行の口座を差し押さえられてしまうと、住宅ローンの約款にある「期限の利益喪失条項」に引っかかってしまい、住宅ローンについても一括返済を求められる可能性がある事です。


 また、給与の差し押さえを受けると、債務者の雇用主に対して、裁判所からの差押通知書が届きます。そして、雇用主はこの差押通知書を受け取ったら、給与の4分の1を債権者に対して直接支払わなければなりません。つまり、債務者にしてみれば、自分が借金の返済に困っていることが、100%雇用主にばれてしまいます。そうなると、雇用主から「この従業員はお金に困っているので、会社の金銭を横領されるかもしれない」というような目で見られてしまう危険性もあるということです。


 したがって、裁判所から訴状を受け取った場合には、一刻も早く弁護士や司法書士などの法律家に相談することをお勧めいたします。

 
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