特定調停をお考えの方に
特定調停のメリット・デメリット
特定調停のメリットとデメリットをご紹介します。 |
《特定調停のメリット》 1.手続が比較的簡単で費用も安く、本人でも申立が可能です 特定調停の申立に必要な書式は、各地の簡易裁判所に備え付けられていることが多く、記載内容もそれほど難しくありません。また、費用も裁判所への申立費用だけで済みます。 貸金業者に対する取引履歴の開示請求や、利息制限法に基づく「引直し計算」も、裁判所が選任した調停委員に行ってもらえますし、交渉も調停委員が仲裁してくれるため、本人が直接貸金業者と交渉するよりは、和解が成立する可能性は高いと言えます。 また、複数の業者をまとめて申し立てられますので、個別に1社1社交渉して和解を取り付けるような手間は発生しません。 2.貸金業者からの取立がストップします 特定調停の申立をすると、貸金業者からの取り立てがなくなります(ただし、ヤミ金など一部の悪質業者の中には、これに従わないものもいます) 。 また、特定調停の手続き期間中は支払いが一時ストップします。 さらに、貸金業者が給与の差押などの強制執行手続に入っている場合、それを停止させることができる場合があります。 3.整理する借金を選べるため、柔軟な対応が可能です 住宅ローンや自動車ローンを特定調停の対象から外すことで、家や車を失うことを防ぐことができますし、勤務先や友人からの借金についても、対象から外すことが可能です。 4.財産の処分を強制されません 住宅ローンや自動車ローンを特定調停の対象から外すのであれば、自己破産などとは異なり、特に担保などを設定していない限り、不動産や自動車を売却する必要はありません。 5.取引履歴の開示をある程度強制できます 利息制限法に基づく「引直し計算」に必要な取引履歴の開示に応じない貸金業者に対して、裁判所から文書提出命令を出してもらうこともできます。命令に従わない業者に対しては過料の制裁があるため、一定の強制力があります。 6.どんな職業の人でも利用できます 自己破産とは異なり、特定調停をしたからといって、特定の職業上の資格を失うことはありません。 7.比較的、他人に知られずに手続きが可能です 自己破産や個人再生のように官報に住所氏名が公表されることもなく、貸金業者からの連絡も、原則として特定調停の申立後には本人には行きませんので、債務整理をしていることが、比較的職場や家族、友人などに知られにくい手続きであるといえます。 《特定調停のデメリット》 1.管轄が申立人の住所地の裁判所ではありません 特定調停の申立は、原則として貸金業者の事務所の所在地を管轄する簡易裁判所に対して行います。自己破産や個人再生とは異なり、申立人の住所地ではないので、注意が必要です。 ただし、貸金業者の支店の所在地でも可能な場合や、複数の債権者についてまとめて申立をする場合には、そのうち最も近隣の貸金業者の所在地を管轄する簡易裁判所に申立をすることが可能な場合もあります。 2.期日には本人が裁判所に出頭して、相手方と交渉しなければなりません 特定調停の期日には、平日の日中に、裁判所に自ら出頭しなければなりません。また、基本的に貸金業者との交渉は、自分で行わなければなりません。 もちろん、裁判所が選任した調停委員が仲裁してくれますが、調停委員はあくまで申立人と貸金業者の仲裁をする役割であり、ある意味「中立」の立場ですので、必ずしもあなたの味方をしてくれるわけではありません。 この点が、弁護士や司法書士が依頼人の代理人となって、依頼人に有利に交渉をすすめてくれる任意整理とは異なります。 3.調停が成立しない可能性もあります 特定調停は裁判所で行われますが、相手方である貸金業者に和解を強要できるものではありません。基本的には相手方との「話し合い」ですので、債権者と合意に達しない場合には調停は成立しません。 もっとも、裁判所が相当であると認めるときは、職権で当事者双方の申立の趣旨に反しない限度で「調停に代わる決定(17条決定)」を出すこともできます。 債権者はこれに対して異議申立てをすることもできますが、貸金業者が多忙を理由に特定調停に出席しないために合意が成立しないような場合には、17条決定に応じてくれることもあります。 4.取引年数が浅い場合や、もともとの金利が低い借金は、あまり減額できません もっとも、この場合でも将来利息の免除・引き下げや返済月額・返済回数の見直しは(相手の業者にもよりますが)可能ですので、従来よりも返済はおおむね楽になります。 ただし、「引直し計算」後の借金のさらなる減額は困難です。 「引直し計算」後の借金は、法的にも支払義務があるので、それ以上の減額にはなかなか応じてもらえないのが実情です。 5.和解後に延滞すると、強制執行を受ける可能性があります 貸金業者との和解ができた場合には、裁判所で調停調書が作成されます。この調停調書には確定判決と同等の効力があり、債務者が調停調書に定められた返済を滞納すると、債権者が強制執行手続(給与の差し押さえなど)を容易にできることになります。 したがって、あせって無理な内容の和解をすると、後で大変なことになるおそれがあります。 6.手続内で過払い金の回収はできません 原則として特定調停では過払い金の回収までは行わないため、過払い金が発生している場合には、特定調停の申立後に、別途過払い金返還訴訟の提起が必要になります。 また、誤って「申立人と相手方は、相互に債権債務がないことを確認する。」という内容の清算条項を入れられてしまいますと、和解後に過払い金の請求ができなくなる可能性があるため、注意が必要です。 7.信用情報機関のブラックリストに載ります 特定調停を行うことにより、信用情報機関に「事故情報(ブラックリスト)」が登録され、通常5年~7年くらいの期間は、通常の借入や、住宅ローン、自動車ローン、クレジット契約等が出来なくなります。 当事務所では、特定調停をご自分で進められる方に対してもアドバイスを行っておりますが、最終的にはメリット・デメリットを良く比較した上で、ご自身で決断していただくことをお願いしております。 |