「住宅ローン特則」は、小規模個人再生、給与所得者等再生の両方で利用が可能です。利用にあたっては、再生申立の際に、あらかじめ「申立書」および「債権者一覧表」に、その旨を記載することが必要です。
《住宅ローン特則の適用要件》
個人再生手続で住宅ローン特則を利用する場合には、以下の要件をすべて満たすことが必要です。
1.再生債務者(個人再生手続を申立した債務者)についての要件 ・再生債務者が自然人であること
(つまり、法人ではなく個人であること)
・再生債務者が自分の居住用の住宅を所有していること
2.住宅についての要件 ・建物の床面積の半分以上が、自己の居住用であること
・住宅に、住宅ローンの債権者または保証会社の抵当権のみが設定されていること
・住宅以外の不動産(敷地など)にも住宅ローンの抵当権が設定されている場合には、その抵当権よりも優先順位の低い抵当権などが設定されていないこと
3.住宅ローンに関する要件 ・住宅(敷地を含む)の新築、購入、リフォームに必要な資金の借入であること(借り換えでもよい)
・分割払いの定めがあること(一括払いでないこと)
4.その他の要件 ・住宅ローンが保証会社により代位弁済された場合には、代位弁済後6ヶ月を経過するまでに再生手続開始の申立をすること
《住宅ローン特則の種類》
住宅ローン特則には、以下の4つがあります。
1.期限の利益回復型 住宅ローンの支払いを延滞すると「期限の利益を失う(ローン残高の一括弁済を求められる)」ことになりますが、住宅ローン特則を利用することで、支払いが遅れた分の元金と損害金を原則3年間(最長5年間)の分割で支払い、また、遅れていない分については今まで通りの条件で支払うことで、住宅が競売にかけられてしまうのを防ぐことができます。 ただし、その3年間~5年間は、「本来の支払い分」と「遅れた支払い分」両方の返済をしなければいけないことになります。
2.最終支払期限延長型 「期限の利益回復型」では、再生計画に基づく3年間~5年間の弁済期間中は、上記の通り、住宅ローンについては「本来の支払い分」と「遅れた支払い分」両方の返済をしなければいけないことになります。 また、大幅に減額されるとはいえ、同時に住宅ローン以外の借金の返済も返済しなければならなくなります。 そうなりますと、月々の返済額が大きくなってしまうため、それを支払える見込みがないという方も出てきます。 そこで、こうした場合には、住宅ローン特則を利用することで、住宅ローンの支払期限を最長で10年間延長することができます(ただし、70歳までには完済しなければなりません)。 これにより、毎月の支払額を減らすことができます。
3.元本据え置き型 さらに、「最終支払期限延長型」でも支払いが難しい場合には、この特則を利用することができます。 再生計画に基づく3年間~5年間の弁済期間中は、住宅ローン以外の借金の返済をしなければならないため、それに加えて住宅ローンの返済を続けるのは負担が大きいような場合、この期間中は、住宅ローンについては、元本の一部および利息のみを支払うという内容の特則です。 なおこれら1~3の特則は、どれかひとつを自由に選んでいいというものではなく、まず1を検討し、それがダメなら2、それでもダメなら3というように進んでいきます。
4.同意型 住宅ローン債権者の同意があれば、上記の1~3以外の内容の特則を定めることも可能です。 例えば、返済期間をさらに延長したり、ボーナス払いをやめるといった内容です。
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